ライト文芸とライトノベルの違いについての考察

小説

近年、「ライト文芸」の名前が良く聞かれるようになりました。「ライト」の名を冠する小説のジャンルとしてはすでに「ライトノベル」があり、名前こそ似通っていますが、読者層は必ずしも同じではないらしい。何がどう違うのでしょうか。
今回はライト文芸とライトノベルとの違いについて書いて行こうと思います。

ライトノベルについて

現在の若者向け娯楽小説としては恐らく最もメジャーな形態でしょう。

純文学と大衆小説とが分かれ、大衆小説からさらに枝分かれして生まれました。

発祥の時期についての細かい議論は省きますが、90年代の初め頃には一つのジャンルとして確立したといえるでしょう。
会話を重視した作風が重んじられる点・挿絵やイラストが重要視される点・さまざまなジャンルを取り込み得る形態を取っている点で、それまでの大衆小説とは一線を劃しています(そしてそれらを逆手に取る作風もまた、受け容れられています)。その性質上、マルチメディア化されることも珍しくありません。男性向け・女性向けという区分に必ずしも拘泥しない作家も(決して多くはないにしても)存在し、そういう点でも新鮮なジャンルです。
ライトノベルから出発して直木賞を取るに至った作家や、大衆小説で名を挙げた作家がライトノベルを書くなど、大衆小説との混淆も起こるようになって来ました。
男性向けのレーベルと女性向けのレーベルとがあり、前者ではSFやラブコメが、後者では恋愛ものや女性の立身出世物語が、主に人気を博しています。また、両者ともにファンタジーとの親和性が高いという特徴があります。
現在は男性向け・女性向けの区分がより曖昧になってはいますが、長い間に築かれた壁はまだまだ厚いという印象を受けます。男性向けのラブコメと女性向けのBLとを同時に愛読するという人はほとんどいないのではないでしょうか。

ライト文芸について

ライト文芸はライトノベルと一般文芸との間に位置するものと見ることが出来ます。

ライトノベルの対象年齢が(一応)十代二十代となっているのに対し、ライト文芸は二十代からを対象としています。「大人向けライトノベル」とも呼ばれます。
ライトノベルと異なり、描写やストーリーにより重きを置く作風が特徴です。その他、女性主人公がやや多いこと、ホラーや妖怪などをテーマとした作品が多く見られること、なども新しい点といってよいでしょう。

ライトノベルと同じようにイラストを表紙に据え、イラストレーターの名前も大きく書いてありますが、イラストがパステル調になっていたり、主人公の年齢がやや高めに設定されていたり、より現実的な舞台の上で物語を展開していたり、とライトノベルとの違いが出ています。
ライトノベルが確立して長い年月が経ち、「ライトノベル」という枠が変容してしまって、そこからこぼれてしまうような作品をライト文芸として出しているというように思われます。ライトノベルでは物足りないと感じる読者が次に手を出すのにはうってつけのジャンルだといえます。
ちなみに「キャラ文芸」と呼ばれるジャンルも存在しますが、ライト文芸との差異はそこまで明確ではありません。ただ、キャラ文芸を女性向けのジャンルとして認識しているレーベルも存在しているようです。

まとめ

ライトノベルとライト文芸とは多くの共通点を有しているが、ライトノベルが若年層をメインターゲットとした作風を取っているのに対し、ライト文芸は青年層を見据えた作風を取り、ライトノベルの次に手に取るジャンルとして構想されている。

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