【初心者向け講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第10回 統合管理
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ここまで、連載を重ねてきましたが、そもそも論に立ち返ります。
ノベルゲームプロジェクトで固有の目的を定義していますか。
一番最初の概要にて説明をさせていただきましたが、定常作業とプロジェクト作業はリソース人員からして異なる可能性があります。
プロジェクト計画、作業計画、リソース計画、予算計画の4つの計画は大なり小なりきちんとしたものを作っておきたいです。
ノベルゲームプロジェクト計画
プロジェクト計画では、そのプロジェクトをどこまで完成させるかを定義します。
システム画面は既存のものを応用するのか、新規で一から作成するのか。
オトメイト社のような階層モードをつけるのか、Fate Stay Nightのような豪華な戦闘シーンエフェクトが必要なのか。
ノベルゲーム作品においては、プロジェクト計画は企画書を兼ねる事が非常に多いと思います。
企画書は、どのサークルさんも概ね年齢指定有無[一般・PG12・R15・R18]・ジャンル[サイコホラー百合等]・属性[BL・百合等]・キャッチコピー・あらすじ・キャラクタ説明・ルート分岐があればルートの概要などを記載している事と思います。
それらは物語を構成するうえでは非常に重要な要素ではありますが、プロジェクト運用的には十分な要素ではありません。
プロジェクト計画では、具体的にもう一歩踏み込んでリリース計画やテクノロジーのPoc計画なども盛り込んでおきたいです。
リリース計画は、例えば体験版を出したあと完成版をPCで出す。あるいは最初からMobile FirstでAndroidやiOSでしか出さないなどです。
テクノロジーのPocというのはProof of Conceptの略で、ノベルゲームサークルさんとして、例えば新しいプラットフォームで創作をする際には、やはりプロジェクトが始まって本格的な実装が開始される前にごく短い短編だとしても作って、どのような演出が可能なのか。
そういった面を検証しておく必要性を感じている為、追記させていただいています。
これは吉里吉里からティラノに乗り換えたり、あるいはUnity-宴で初めて作成したりといったケースにも当てはまりますが、えもふりやLive 2D、あるいはVRといった2010年代までの作り方とは異なる技術体系との組み合わせでノベルゲームを作れる可能性が広がって生きている為でもあります。
ノベルゲーム作業計画
作業計画は基本にして奥義のようなもので、スケジュールの進捗遅れを日々日々きちんとトレースして、対策を打てていたら一流どころの企業でも戦力として活躍できると思います。
作業計画を作成する技術やテクニックは、脈絡なく並べてもWBSやガントチャート、PERT、クリティカルパスなどとても多いです。
最近はAsanaやBacklogなど、スケジュールや進捗を管理するのにおあつらえ向きなクラウドツールも大量に存在しているので、各プロジェクトチームの規模感や企画のボリュームにより、自分たちのチームにふさわしいものを選んでみてください。
Arts of Shikinagi内には大学のノベルゲーム制作サークルと、社会人で組んだノベルゲーム制作サークルの制作スケジュールが2桁単位で存在していますが、
[例]下記のような模範的な編成で、ティラノビルダー使用でおおよそ4.2~6.0か月ほどです。
3万字 × キャラクター3名 × 制作メンバー[(全員学生) 絵師1,シナリオ1,スクリプト1]
ノベルゲームリソース計画
リソース計画というのは、ノベルゲームを制作されている中であまり聞いたことのない単語ではないでしょうか。
リソースは、いわゆるヒト・モノ・カネです。
予算計画との違いは、予算計画は実際に集めたお金をどのように利用していくのか。
ボイスをつける為に利用するのか、ティラノビルダーのプロ版を購入するのに使うのか。
イラストレータさんに依頼する為に使うのか。音楽に使うのか。
選択肢は様々ですが、その予算を執行する為には、原資となるお金が必要です。
また、当たり前のことかもしれませんが、ノベルゲームを制作する際にはシナリオと、イラスト、スクリプトが最低限は必要になります。
この要素に、ボイスや主題歌、ムービー、あるいはえもふりやLive2D、あるいはVRといった技術を組み合わせたり、ノベルゲームにシミュレーションの仕組みを加えてお店経営SLGとしたり、あるいは戦略SLGとする事も可能です。
それがあれば、創れるよねというのは置いておき、それらを作るひとは誰なのかという管理です。
リソース管理:人
シナリオライターの方かイラストレーターの方が、サークルの中核にいて、その方が企画を出すというパターンが多いように思います。
リソース計画は基本的に、足りないもの、人、お金を集めることだと考えていただければよいのですが、ここでプロジェクト計画で決めた内容が影響してきます。
有償か無償かというお話です。
有償で頒布する作品であれば、イラストやシナリオ、音楽などを依頼するときも有償でお願いし。
無償の場合は、そのサークル様と依頼された側との交渉で、かなり千差万別なようです。
足りない人が、シナリオライターなのか、イラストレーターなのか、ボイスコさんなのか。スクリプターなのか、求める技量はどのくらいなのか。
様々ですが、概ね、周りのサークルさんをみると依頼する方はココナラのサービスを使うやTwitter、Pixivで探して依頼するなどをよく見かけるように思います。
リソース管理:もの
ものは人よりも直感的にわかりやすいかもしれません。
スチルなら何枚用意するのか、立ち絵の表情差分は何枚か、それとも作らないのか。立ち絵ありのキャラクターは何名いるのか。
そういったこともプロジェクト計画の中では立てておく必要があります。
その結果として、リソース計画で必要なイラストや音楽、ボイス、シナリオに対して人的リソースを配分するのか、それとも金額的なリソースを費やしてショートカットするのか決めていくことになります。
ある意味で戦術SLGゲームなどと似ているのかもしれませんね。
リソース管理:お金
お金は大学のサークルなら部費の内、そのゲーム制作に費やせる予算+メンバの出しあうお金という形になることが多いと思われますし、社会人のサークルならメンバの出しあうお金がどこまでかで使用できる上限が決まってきます。
ただ、ここ数年はフレンドファインディングやクラウドファンディングといった自分たち以外の方からお金を集めて作品を造るという環境も立ち上がってきていますので、その辺りはサークルそれぞれの判断でご随意にといったところでしょうか。
ノベルゲーム予算計画
予算を実際にどのように出費していくかの計画です。コミケやイベントなどは本稿ではプロジェクトの範囲外としていますが、サークル=1PJのケースではほとんどの場合、サークル予算=プロジェクト予算に等しい気もします。
その場合は、イベント出展や印刷費なども考慮に入れて計画を立てていく必要があるでしょう。
特にイベントで頒布する場合には、データカードにするのか手焼き印刷するのか。
手焼きの為にデュプリケーターを購入するのか。CD・DVDをいれるケースはBlue-Ray用のものか、トールケースかCDサイズか。
どのようなオプションをとるかによって、またどのような数を造るかによって変化してきますので、是非後悔のないように一度話し合ってくださいね。
ノベルゲーム風味のマネジメント講座はこちら
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第1回 プロジェクト
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第2回 スコープ
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第3回 タイム
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第4回 コスト
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第5回 品質
〇ノベルゲーム風味の制作人的資源マネジメント
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第7回 コミュニケーション
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第8回 リスク
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第9回 調達
【初心者向け制作講座】ノベルゲームの制作マネジメント・作り方 | 第10回 統合管理
〇ノベルゲーム風味の制作ステークホルダーマネジメント
〇ノベルゲーム風味の制作講座まとめ
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