女性向け和風ファンタジーとしての虹色宝石譚

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和風ファンタジー「虹色宝石譚 ~イシヨミの贈り物~」は2018年10月に企画が立ち上がりました。

樟葉の原案を基にしてシナリオライターの森沢さんと協力して、企画をまとめ彼女が8割、樟葉が2割ほどの按分で企画が完成しました。

元々の初期要素から引き継がれたのは店主の存在、そして魔女の存在と不思議な店が舞台という所です。

和風ファンタジーとして、また一般~女性向け作品として作っていくことをが固まったのは、思えばこのころかもしれません。

和風ファンタジーとしての「虹色宝石譚」

和風の世界観をつくりたいというのが、森沢さんと私の共通の理解でした。企画を練り上げていく際には、様々な乙女ゲームの要素を参考にしたので、和風+女性向け作品の色合いが強い企画となっています。
「虹色宝石譚」は虹晶堂が舞台に展開されます。実はこれは、元々の原案がSLG作品だった名残でもあります。

SLGになるかもしれなかった和風ファンタジー

「虹色宝石譚」の開発前の仮名称は「宝石」で、実は最初に森沢さんと協議に入った際にも、森沢さんサイドは本作をSLGと勘違いしていて、プロットや企画のアイディアを考えてきたというハプニングもありました。
ただ、よくよく森沢さんの企画を読んでみるとやはりノベルゲームでリリースしたいという想いが強くなり、ここにノベルゲームとしての虹色宝石譚が誕生します。

SLG作品(シミュレーションゲーム)としての虹色宝石譚は、店主が謎めいた魔術師or魔女のような存在でした。

彼、あるいは彼女が星の種をどこかから仕入れてきて、あるいはイベントなどで取得する。

それを育てて、天使や魔王様、あるいは吸血鬼。そういった人ならざる者たちへ販売する。

それと同時に、人間を相手にした店でもあって、天使や魔王様から星を育てる肥料として買い取ったエーテル水や、冥府の獣の牙などを販売する。

企画内容としては簡易にまとめると「星を育て、人や人ならざるものへ売る」ことが目的の作品、物語です。

ノベルゲームとしての和風ファンタジーあるいは幻想骨董奇譚

森沢さんの様々なアイディアや、新規登場人物の設定案「助手」「吸血鬼」によって、虹色宝石譚をとりまく世界は着実に和風ファンタジーとしての地歩を固めていきました。

企画上では、ただ単に「吸血鬼」とだけ書いてあったような存在が、森沢さんのシナリオによって息吹を吹き込まれ、生きとし生ける存在として誕生していく過程は何度も目の当たりにしても、非常にああ、よかった。

物語が生まれいづる瞬間、その甘露のようななんとも筆舌につくしがたい感覚は、マスタ―アップの際よりもあるいは勝るかもしれない感覚です。

そんな和風であり、ファンタジーであるこの虹色宝石譚という作品を号する際に、森沢さんを中心にわたし達は考え「幻想骨董奇譚」とさせていただきました。

外向けには、わかりやすいように和風ファンタジーという表現を使用させていただいています。

ただ、より本質的にはやはりこの作品は、宝石と幻想、そして何よりも骨董品を中心に客と店が織りなす奇妙で、そして温かい<ものがたり>なのだと、そう思うのです。

虹晶堂の見取り図をつくったディレクター

虹色宝石譚という作品において、中核をなす「場」。それは虹晶堂をおいてほかなりません。

その虹晶堂を具体的な姿として描き出す際には、ディレクターの篝さんが果たした役割は非常に大きなものでした。

なんと、虹晶堂の見取り図を設計ソフトを駆使してつくってしまったのです。

それはこの作品、物語にかける想いが段々と結実していくうえでの幾つ目かの飛躍のタイミングでした。

設計図を基に、見事な筆致で流麗に、そして美麗に。

虹晶堂のキービジュアルを描いていただいたのはアナさんです。

作品におけるキービジュアル。物語の重心が固まったことで、これから面白い事が始まるのだという非常にわくわくとした感情を覚えたことを昨日のことのように思い出します。

キャラクターデザインと物語

虹色宝石譚の登場人物を語るうえで、romiyさん、仲野小春さん、じゅんさんのお三方を忘れる事は出来ません。

それぞれ、romiyさんには人間の女性、仲野小春さんには人間の男性、じゅんさんには人ならざるもの。

虹色宝石譚はそんな工夫で、複数の絵師様、イラストレータ様の画風が異なる作品をひとつの物語の中に混ぜ込んでいます。

登場人物のイラストレーション、デザインを語るうえでも森沢さんが多くの、そしてとても大切な役割を果たしています。

虹色宝石譚は章毎にそれぞれ特徴となる石が存在し、それがこの作品を形作るおもしろい部分でもあります。

そのイメージにそぐうように、どのようなキャラクター象なのかを文字で書きだし、ディレクターや他のメンバの意見も取り入れ、あるいは形を変え、時には彼女自身の考えで通し、そして出来上がりました。

あの世界で生き、あの世界で死にゆく人、そして人ならざるもの。

夢の世界、庭の世界

虹色宝石譚において、虹晶堂と並んで重要な要素があります。

庭の世界です。

詳しい事をここで書いてしまうとネタバレになってしまうので、割愛いたしますが。本作品における「庭」。

それは、小説家・作家の「梨木果歩さん」「恩田陸さん」「テリー・ケイ」のお三方の影響を主に受けています。
併せて、「里美しばさん」のノベルゲーム作品についても、影響は大きいです。

梨木果歩さんの作品で特に大きな影響を受けていると思うのは「りかさん」「家守奇譚」「裏庭」の3つの作品です。

著名な作品に「西の魔女が死んだ」という映画化もされた作品がある梨木果歩さんですが。

他にも様々な作品を書かれている中で「庭」あるいは「彼岸」という存在を扱っている上にあげた作品の考え方は、虹色宝石譚にもかなりの部分受け継がれている要素だと思います。

恩田陸さんは、「ノスタルジア」という象徴的な要素を受け継ぎたいと考えていますが、具体的な影響を受けた作品は実は「ライオンハート」かもしれません。
実はそのほかに「お客さん」という要素が「朝日のようにさわやかに」「私の家では何もおこらない」といった短編のほか、「ネクロポリス」でも出てきます。

「おきゃくさん」というのは、すごくそこに含まれる様々な意味を還元していくと「彼岸の住人」です。一言では言い表せず、細かく書こうとするとネタバレになったりしてしまう要素なので、これもこのあたりにします。

ただ、「お客さん」という響きが非常に独特の、あるいは興味深い要素として扱われている作品ですので、機会があれば是非。

テリー・ケイさんは「白い犬とワルツを」の影響があります。もふもふでしょといわれるかもしれませんが、まあたしかにモフモフは否定できません!

白い犬の意味合い。そこのあいまいで、そして繊細なニュアンスがエッセンスとして虹色宝石譚にも振りかけられています。

そんな庭を大宮いおさんは、視覚化し見事な筆致で描いていただけました!
かなり、曖昧模糊とした伝え方になってしまうにも関わらず、作品世界への理解がすごいです!

結びに

女性向けという言葉を冠しているのは、やはりこの作品において多くの方が参加してくださっていますが、中核をなすクリエータが女性であり、ある意味女性自身の為のものがたりだからです。

もちろん、男性がプレイできないことはありませんし、むしろ老若男女問わず多くの方にプレイいただける出来だと思っています。

ただ、よりプレイしていただきたいのは女性の方です。

それは主人公が「助手」という女性であることも確かですが、何よりも。

彼女が、余命が定まり、残りの命数を数えるような変わってしまった日常を「助手」がどのようなことを考え、どのように過ごしていったのか。是非、読んでみていただきたいと思うからです。

「虹色宝石譚」プロデューサー 樟葉 涼

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