Arts of Shikiangi 温泉担当がオススメするニッポンの温泉3(長野編)
こんにちは! Arts of Shikinagi 温泉担当のとーますです。
前回、前々回と、温泉の記事を書かせていただきましたが、今回は首都圏に比較的近く、有数の温泉を抱える長野県の温泉にしぼって筆者のおすすめを紹介します!
《1.地味ながら世界に誇った温泉 小谷温泉(小谷村)》
小谷温泉は小谷村にある温泉です。
小谷温泉―。この名前を知っている人は一体どれだけいるでしょうか。
正直なところ、それほど知名度はないものではないかと思います。
しかし、明治期にドイツで開催された万国霊泉博覧会に日本代表として出品された4つの温泉が登別温泉、草津温泉、別府温泉、そしてこの小谷温泉なのです。他の名だたる3つの温泉地と比べると、現在そのブランドこそないものの、歴史は古く、川中島の合戦の際に、武田信玄の家臣によって元湯が発見され、江戸時代にはすでに湯治場として確立していた由緒正しい温泉場です。
松本と糸魚川を結ぶ通称「塩の道」を外れ、雨飾山を登っていくと、「山田旅館」という湯元の一軒宿があります。この山田旅館の本館は江戸期に善光寺の宮大工によって建てられた3階建ての建物で、そのほかにも木造建築6棟が文化庁の文化財に指定されているノスタルジーな雰囲気です。
温泉は内湯と外湯。場所が別で料金も別々にかかります。初めてならば内湯に行きましょう。
内湯は三畳ほどの浴槽でやや熱め。滝のように高い場所の湯口から落とされています。重層泉ということもあり、湯上りはさっぱりします。
自炊をしながらの湯治、という古き良き(?)湯治スタイルは東北地方などではいまだ盛んですが、意外にも長野ではその数を減らしつつあります。この山田旅館にはコイン式のガスコンロなど自炊湯治を感じさせる様々な設備が数多く見受けられ、タイムスリップ気分を味わえるでしょう。
《2.さまざまな形態の温泉施設が混在 下諏訪温泉(下諏訪町)》
下諏訪温泉郷は下諏訪町にある温泉です。
諏訪の人々は温泉好きだ。・・・これは私の持論です。
長野県民は大抵温泉好きですが、中でも特に温泉文化が発展しているのは、おそらく諏訪地域なのではないでしょうか。街中には勿論、高速道路のSAから鉄道駅、百貨店の中(閉店)にまで温泉で溢れています。
諏訪の温泉は難しい。・・・これも私の持論です。
そもそも、温泉施設には様々な形態があります。共同浴場にはじまり眺望を売りにしたもの、建物の歴史など風情があるもの、サウナやジェットバスなど設備を売りにしたもの、湯治のような滞在に利便を図ったもの、山奥の秘湯…。諏訪の地域にはこれらすべてを網羅しているといっても過言ではないでしょう。
そんな筆者が悩んだ末にオススメしたいのは、下諏訪温泉にある菅野温泉です。
下諏訪駅からも近く、かつ有名な温泉なのでご存知の方も多いかもしれません。その形態は正に地域に根ざした温泉銭湯。中山道に面したリニューアルされた狭い間口を進むと、途端に昭和の建築物になります。小谷温泉が明治のノスタルジーなのに対して、こちらは昭和のノスタルジーです。
浴室は中央に楕円形の浴槽があるシンプル・イズ・ベストな造りです。
湯は無色透明の単純泉。温度は44℃くらいでしょうか。諏訪の温泉はえてして熱めですが、ここは頭一つ熱めです。
東京の銭湯が告示料金で470円の時代に、200円台で入れる諏訪の地域、実にありがたいじゃないですか。
菅野温泉 一般社団法人下諏訪町地域開発公社
《3.この温泉だけでは使いきれないほどの湯量 葛温泉(大町市)》
葛温泉は大町市にある温泉です。
さてさて、立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口、大町市は大町温泉郷などの観光客向けの温泉郷を形成していますが、実際のところ大町温泉郷に源泉はありません。※
では、源泉はどこにあるのか?
それは、大町市のはるか山奥、高瀬渓谷に位置する葛温泉という温泉から引湯しているのです。※
温泉は鮮度が命。であるならば、大町温泉よりも葛温泉のほうが遥かに素晴らしいことは自明でしょう。
そんな葛温泉は信濃大町駅から車で約30分、大町ダムの更に上流にある七倉ダムの麓に位置しています。
高瀬川に沿って1kmほど間隔を空けて3件の温泉宿が点在しているエリア、ここが葛温泉です。
いずれの宿も日帰り入浴ができ、素晴らしい特長を有しています。
本来筆者が一番オススメしたいのは最奥に位置する高瀬館さんであるところなのですが、ここ数年は、代替わりしたのか、売りであるはずの露天風呂の管理が「?」な時が多く、やや玄人向けになってしまった感が…。ということで初めて行かれる方には中央に位置する、温宿かじかさんをオススメします。内湯こそかけ流し・循環併用ですが、外湯はかけ流しで、硫黄臭、湯花の量も素晴らしいです。
そんな葛温泉、豊富な湯量で前述の大町温泉のみならず木崎湖温泉などにも配湯するほどの湯量で実に贅沢なお湯の使い方です。
行かれる際は野生動物の襲撃に十分お気をつけて・・・
※ …と、書いたのですが、先日大町温泉に行った際に成分表を見たら、どうやら自前で井戸がある雰囲気なので記事の内容と異なるかもしれません…
《4.美人の湯を語るならここは外せない 白馬八方温泉(白馬村)》
白馬八方温泉は、白馬村の温泉です。
フォッサマグナの真上に位置し蛇紋岩形成地帯の白馬村は、流石に温泉も豊富…と言いたいところなのですが、実際には温泉開発はそこまで進んでいません。
白馬八方温泉も昭和の終わりに掘り当てた温泉で、八方尾根開発株式会社が運営する4つの日帰り温泉の総称だと思います。
そのうち、「みみずくの湯」は白馬駅から歩いてもアクセスできる立地にあり、眺望と設備の良さからお勧めの施設です。
この温泉の特徴は、pH値・湯量・温度にあります。pH値はなんと11.3。まさに日本最強の高アルカリ温泉と言っても過言ではないでしょう。そしてその湯量の豊富さと温度の高さ。アルカリ泉といえば、神奈川の七沢温泉や飯山温泉、埼玉の都幾川温泉などありますが、いずれも温度が低く、湧出も満足なものとは言えません。ですが白馬八方温泉は51℃の源泉温度、そして日帰り入浴施設はすべてかけ流しという湯量も兼ね備えた珍しい温泉です。
多くのアルカリ泉が「美人の湯」と言われるのは、皮脂と温泉のアルカリが反応して皮膚に石鹸のような状態を形成しスベスベにするためですが、一般的な石鹸のpHが10前後ですから、pH11を超える白馬八方温泉は、肌がツルツルスベスベになこと間違いないでしょう。
《5.日本を代表する鉄鉱泉 天狗温泉(小諸市)》
天狗温泉は小諸市に位置する温泉です。
実のところ、筆者は長野県の東信と呼ばれる地域(軽井沢・佐久・上田・小諸などの地域)はあまり詳しくありません。浅間山が見え、セーブオンが出店していて、レタスやキャベツを育てている…このヒントだけではもはや群馬県です・・・ですよね? え?セーブオンってもうないの??
天狗温泉はそんな東信エリアの小諸市に位置しています。
小諸インターを降り、浅間山へ向けて車で約30分…道は途中から未舗装の林道然とした道となり、この道で本当に合っているのか、やはりここはグンマーなのではないかと不安になってきます。そんな浅間山麓の登山口に位置するのが国民宿舎 浅間山荘です。
この温泉の特徴は、「日本一の赤い湯」の異名を持つほど鉄分が豊富に含まれた単純鉄鉱泉であるということ。源泉温度は9℃という冷たさですが、良い具合に加温されているのでご安心ください。源泉は無色透明ですが、加温の際に空気にふれて酸化し、赤褐色となった湯は見た目のインパクトも抜群です。
その湯は含鉄泉の中でもそれほど鉄臭くなく入りやすいお湯です。しかしながら、その効果は含鉄泉の名に恥じない保温効果が高さで、湯上り後も体の芯から温まり、湯冷め知らずでしょう。
実はこの温泉、循環・かけ流し併用です。序章編で「本物の温泉はかけ流しでしょ」と啖呵を切った筆者ですが、それでもここはぜひノミネートしておきたい温泉のひとつでした。
いかがでしたでしょうか。まだまだコロナ禍で気楽に出かけることもままならない状況ですが、収束したら是非旅の参考にしてみてください。
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